つるバラが彩るガーデン風景は本当に素敵なもの。とはいえ、花が咲いていないときはあまり見映えがいいとはいえません。ここでは、スカートの裾や袖口に取りつけたフリル「ヘム」のように、壁の縁をふわふわとバラの花が飾る、「ローズ・ヘム仕立て」と名付けた仕立て方を解説します。
つるバラは花期以外の美観の考慮が必要
壁一面に咲くバラの景色は、本当に華やかで見事なものです。
けれども、それはバラの花が咲いている春のいっときのこと。
花後は夏にかけて枝が旺盛に伸び、モサモサと枝葉が茂った後、落葉して冬は茶色い枝が壁を無骨に走る景色が展開します。公道に面していれば伸びた枝は通行の邪魔になりますし、枝だらけの壁も家の顔となる場所にはあまり相応わしいとはいえません。
とはいえ、家をバラで華やかに彩りたいという希望はとても多いものです。そこで考えたのが壁の上部に沿って主枝を誘引する方法です。スカートの裾や袖口に取りつけたフリルを「ヘム」と言いますが、壁の縁をふわふわとバラの花が飾るこの仕立ては、ちょうどそんなイメージなので「ローズ・ヘム仕立て」と名付けました。
この例はW邸(ガーデン施工例で紹介しています)の外壁で、公道に面したレンガの壁のてっぺんに、ロサ・バンクシアエ・マルノリス(モッコウバラ)を誘引しました。このバラは常緑性なので、冬でも緑の葉が壁をみずみずしく彩って、落ち葉の掃除もあまりせずに済みます。春早く、他のバラに先駆けて一重の白い花を咲かせ、病虫害の被害もほとんどない丈夫なつるバラです。洋風の庭はもちろん、和風の庭にも似合います。トゲがないので扱いやすく、広い範囲を彩りたいときにおすすめのバラです。
バラを壁の後ろに植える
バラは株元に日が当たっていなくても、光合成をする葉に日が当たっていれば生育できます。この庭では壁の後ろへ植栽していますが、新苗のような小さな苗だと日が全く当たらず枯れてしまう可能性があるので、壁の上まで枝が届く大苗か、ある程度枝を伸ばしてから定植するとよいでしょう。
主枝を壁の上へ誘引・固定
主枝となる太い枝を真横に這わせます。主枝は2本這わせましょう。1本がテッポウムシなどで枯れてしまった場合にも、もう1本あれば景色が変わってしまう心配がありません。5年ほどで写真のように直径3cmほどの太い枝になります。強風や台風で外れてしまわないように、ネジとワイヤーで主軸をしっかり塀の上部に固定しています。
ローズヘム仕立てのメリット
ローズヘム仕立てのように、枝を横に這わせると、「頂芽優勢」という植物の性質によって、花芽を持った枝が主軸からたくさん発生します。それを表裏に振り分けて適度に剪定し、壁の縁をふわふわと縁取るようにバラを咲きます。壁の風合いも活かしつつ、高い壁をバラの花や葉がふんわり柔らかく覆い、外に対し威圧感や圧迫感のない景色を生み出すことができます。
ローズ・ヘム仕立ては、他のつるバラでも同様にできます。枝の伸長率を確認して、壁の長さに合わせて適したものや株数を用意しましょう。外壁がなんとなく味気ないなぁと思われる場合は、おすすめの方法ですよ。もちろん、仕立てのご依頼もかたくり工房でお受けしています。
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